もったいないと思う。
せっかく綺麗な色をしているのに。
そう思っていたら、知らないうちに彼の髪に触れていた。
■ こ だ わ り ■
「あの………関羽殿」
少し戸惑ったように呂蒙が関羽に話しかけた。
さっきから関羽は、呂蒙の髪をいじっている。
手入れがされていないであろう、少しごわごわした髪を、愛しげになでている。
その行為が呂蒙には理解できなかった。
「呂蒙殿。髪の手入れをされていないように見受けられるが」
「ええ、まぁ……。する必要もないですし」
呂蒙は特に問題はないというように、素っ気無く答えた。
まぁ、呂蒙は男だ。
そんなに髪を整えなくてもいいだろうが…
呂蒙の髪は元々癖毛なわけではなさそうだから、すこし手入れをすればきっと綺麗になびくだろう。
そう思うと、何故かとても残念な気持ちになった。
「しかしなぁ……、少し手入れをすれば随分違うと思うのだが……」
「いや、俺男ですし。髪の手入れをするよりも書物を読んだほうが……」
「まぁ、確かに。それも一理あるが……」
やはり、惜しい。
綺麗になびく呂蒙の髪を、見てみたい。
そんな思いがいつまでも関羽の胸に残った。
そのとき、ふと思いついた。
本人がする気がないのであれば、自分がやればいいのではないかと。
自分がやっている間、書物でも読んでもらっていればいい。
「なら呂蒙殿。拙者が整えて差し上げようか?」
「…………へ?」
「任せなさい。その間、呂蒙殿は書物でも読んでいればいい」
「はぁ……でも…」
「拙者がやりたいのだ。いいだろう?」
「……」
その後も呂蒙は断ったが、結局、関羽の押しの強さに負け、承諾してしまった。
しぶしぶ、床に置いてあった書物を手に取り、読み始める。
そして、関羽は呂蒙の髪を解き、手に取ったくしで梳かしはじめた。
初めはだまになったところに引っかかったりしたが、何度も何度も丁寧に梳いているうちに、だんだんと綺麗になってきた。
それがなんだか嬉しくて、関羽は夢中で髪を梳いていた。
その間、呂蒙はというと。
書物を読んでればいいといわれたものの……
なんだか、落ち着かない。
文字を目で追っていると、指が髪に絡まったり、そこにくしが行き来したりと、だんだんそっちの方に意識が行ってしまう。
それでも、関羽の顔をみると、とても楽しそうで…
とても「やめろ」とはいえなかった。
結局、関羽の気が済むまで、呂蒙はずっと落ち着かないままだった。
髭にこだわりを持ってる関羽さんなら、髪にもこだわりがあるのではないかと思ったときに生まれたお話です。
きっとたまーにひょっこりやってきては、呂蒙さんの髪を綺麗にしてあげてると思います。
で、呂蒙さんはなんかドキドキして結局書物に集中できない。
新婚みたいな羽毛をわがサイトは応援します(ぇえぇぇ