■ 葉 桜 ■
もう、桜も散り、孫家の庭に植わっている大きな桜の木も、すっかり葉桜となっていた。
そういえば…と、孫権は木に触れていた手を離した。
あの男も、去年、此処にこうやってこの木に手を触れていたっけ。
何をしているんだと問いかければ、
『いや、せっかく綺麗に咲いていたのに、残念だなぁと…』
そう言って、俺が言うことじゃないですか。と、苦笑していた。
桜が好きなのかと問うと、また少し笑ってはい。と答えた。
恥ずかしそうに笑った男を愛しいと思ったのは、きっと孫権だけではないだろう。
「殿ーっ!ほら、はやくしないと呂蒙さんが…」
「そうですよ!呂蒙殿が待ってます!」
「酒も持ったし、早くおっさんに飲ませてやりましょうよ!」
運命とは、不思議なものだ。
以前、一人の男を取り合った者達と、以前よりも仲良くなれた気がする。
そう思うと、思わず笑みがこぼれる。
「ああ、すまんな。今行く」
愛した男が病を患い、血を吐き、もう一年も持たないと言われ、血眼になって治せる医者を探したこともあった。
男の病が悪化した時、いつでも対応できるようにと、壁に穴を開けてまで見守ったりもした。
散々手をつくしたが、男はもう帰ってこなかった。
けれど。
「見ているか、呂蒙」
空を見上げ、孫権は今は亡き男に呟いた。
「お前を愛していた者達は、今、こんなにも元気にやっている」
だから、安心して逝け。
もう大丈夫だからな。
ぽんぽん。と、桜の木を優しく叩いた。
そして、三人と、一人が待つ丘へと駆けていった。
孫権が去った後に、散ったはずの桜が一枚、ひらひらと舞い落ちた。
了
初書き権呂。
孫権は本当に呂蒙のことを良く思っていたので。
らぶらぶにさせてあげたかったけど、無理でした。。(ぇ
設定としては、呂蒙が結核で亡くなって一年くらい…かな。
なにげに陸、甘、凌の三人もでちゃってるし。。
この三人プラス呂蒙が大好きだからなぁ・・・。(しみじみ
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